水本慎太郎(以下、水本): 服電 Closeth Call Produced by Lv.99。ナビゲーターの水本慎太郎です。本日も原宿CAT STREETのテーラリングアトリエLv.99からお届けします 。
毎日何気なく選んでいる服には、その人の生活や仕事、気分、価値観が静かに表れています。この番組では、服という人の今を映す文化をアーカイブしていきます。毎回ゲストの方にお電話をして、電話越しにその人の服にまつわるエピソードを伺います。そこから広がり、仕事や活動、趣味、価値観といったお話をリスナーの皆さんに共有していきます 。
このファーストシーズンは99人の方に話を伺うのだという目標で始めております。さて、今回は「面白法人カヤック執行役員・地域資本主義事業担当の中島みきさん」とお電話がつながっています。今日はどんなお話が聞けるのか楽しみですね。
水本慎太郎(以下、水本): もしもし、今日はよろしくお願いいたします 。
中島みき(以下、中島): よろしくお願いいたします 。
水本: お忙しい中ありがとうございます 。
中島: いえいえ、ありがとうございます。わざわざ面白い機会を 。
水本: いえいえ、こちらこそ。なんせ「おもしろ法人」ですからね 。
中島: そうなんです。ただ、おもしろ法人なんですけど、私が面白いことを言えるというわけではなくて、「おもしろがる」という方式なんです 。おもしろがる法人ですので、おもしろがることはピカイチでございます 。
水本: 素晴らしい。ありがとうございます。中島さん、ミキティ。ミキティは、おもしろがりのプロとして今日はお話を伺えればと思いますのでよろしくお願いします 。
中島: はい、よろしくお願いします 。
鎌倉という街が変えた「服選び」の基準
水本: まず最初に、リスナーの皆さんにイメージを膨らませていただくために、ミキティが今着ている服装をちょっと教えていただけますか?
中島: 今日はですね、紺色の、ちょっと大きめでだぶっとしたスウェットに、その下に少し寒いので、カーキの薄手のコットンのタートルを着ています。あとはデニムですね。靴はもう、とにかく楽な黒のHOKA(ホカ)かなんかの靴ですかね 。
水本: なるほど。わりとカジュアルな格好ということですよね 。
中島: そうですね。本当にそんな感じでいつも過ごしています 。
水本: 鎌倉のオフィスでしたっけ?
中島: そうなんですよ。今、鎌倉駅から徒歩5分くらいのところにあるオフィスの2階にいます 。
水本: 鎌倉は結構寒いですか?
中島: そうですね。南風が海側から来ている時は比較的暖かいのも来るんですけど、さすがに今は寒いですね 。
水本: なるほど、ありがとうございます。最近、つい手に取ってしまう服とか、よく着てしまう服はあったりしますか?
中島: 私はもともと、4年ほど前まではずっと都内の四谷に住んでいたんですけど、鎌倉に越してきてから服装がやっぱりちょっと変わったというのがすごく大きいんですよね 。
水本: ほう。どんな風に?
中島: やっぱりこの街、やたらとパタゴニア(PATAGONIA)を着ている人が多いんですけど 。
水本: パタゴニアの街 。
中島: そう、私も結局パタゴニアを買うことがすごく多くなりました。SDGsというか、暮らし方や地球環境、循環することに興味を持つ人たちが周りに多かったりもするので、洋服の選び方も「これは地球環境にとってどうなのか」ということをちょっと考えながら手に取るようになっています 。なので最近は、パタゴニアで「ウォーンウェア(Worn Wear)」という古着も結構出ているんですけど、それをよく見るようになって。東京にいる時に古着を買うことはなかったんですけど、こっちに来てから古着のシャツやアウターを立て続けに買っています 。
水本: すごいですね、鎌倉。それは、原宿の古着屋さんみたいな「おしゃれ感覚」というよりは、サスティナビリティというか「循環」みたいなことを考えての古着なわけですよね 。
中島: そうなんですよね。もちろん自分に合うかとか、デザインや素材がどうかというのはありますけど、せっかくなら、着られるのであればこういうのを選ぶ方が、私にとってはすごく文脈的にいいなと思ったり。多分、体現したい人なんでしょうね 。
水本: 体現 。
中島: 全ての生活の中にそういうものを取り込みたいという性格なんだろうなと。多分 。
20年前の服が刻む「人生のログ」
水本: なるほど。それは内面的に表現したいというものと、「そう見られたい、理解してもらいたい」という感覚、どちらが強いのでしょうか?
中島: どちらかというと内面的な部分かなと思います。毎日服を選ぶときに、小さなワードローブを見て「あ、これはすごく良いものを買ったな」とか「これはすごく長く着られそうだな」と思えること 。何気に手に取ったセーターが、実は20歳の時に買ったやつだったな、というものを引っ張り出してきたりすると、「あ、意外と良い人生を送れているな」と感じたりするんです 。
水本: なるほどなるほど 。
中島: その20歳の時に買った結構ごっついセーターなんて、もう10年くらいは着ていなかったんですけど。ファッションって循環するって言うじゃないですか。今ちょっと北欧っぽいデザインのものが流行っていたりするので、「あれ、これ意外と良い状態で保管できていたな」とか。それが今もう一回着られるというのは非常に喜ばしいなと 。
水本: 物持ちいいですね。ラッキーとかじゃなくて、自分の「ログ(記録)」を思い出しているような、そんな感じがいいですね 。
中島: まさにそれだと思います 。
水本: つい当時のことを思い出しますよね。
中島: そうなんですよ。「これ母に買ってもらったんだな」とか「この時深夜バスに乗ってスキーに行ったな」とか 。
水本: ずっと来ますね(笑)。エモみしかないじゃないですか 。
中島: 本当にそうなんですよ。リゾラバみたいな感じ 。
水本: 古い?(笑) いや、鎌倉すごいなって 。
勝負服は「自分に魔法をかけるスイッチ」
水本: 普段の日常はそういった形で着られていると思うんですけど、例えばお仕事のプレゼンとか、「今日は大事な日だ」という時の「勝負服」みたいなものってあったりしますか?
中島: ありますあります、めちゃくちゃ選びます 。予算を管理したり承認してもらったりする役割もあるので、「共感してもらいたい」「信頼してもらいたい」という時はやっぱり選びますね。相手にとってどんな服装だったら興味を持ってもらえたり信頼してくれるかな、というのをしっかり見ます。私はシャツが好きなので、襟付きのシャツで 。ピシッとしすぎないけれど、ちょっとピリッとしている、布だけでも立つんじゃないかっていうくらいしっかりした素材のものを選んだり。あとは、暖色系より寒色系をあえて選んだりすることもありますね 。
水本: ほうほう。
中島: 逆に、楽しい会話にしたい時はあえて明るい色を。どうしても男性が多い社会なので「ここは一発黄色を着ていくか」みたいな。ショッキングピンクを着ていくかとか、そういう時もあえてあったりします 。
水本: ミキティが黄色を着ている印象、ありますね。あるある 。
中島: 「忘れられない色」みたいな 。
水本: ちゃんと考えられているんですね。それは「あなたのとの時間をしっかり受け止めて考えていますよ」という表現なんですかね 。
中島: そうですね。ただ、これが本当にどれだけの効果を出しているかはわからないんですけど、ある意味、その服を着ることで「自分はこれで完璧である、十分良い状態である」と自己暗示しているだけなのかもしれないな、というのもあります 。
水本: なるほど、自分に魔法をかけるみたいな 。
中島: チェックインというか。あとなんか「練り香水」も時々、要所要所でつけるんですけど。あれはもう完全に自分だけが匂うようになっているんですけど、自分のためのスイッチとして。洋服と練り香水で、自分だけにキュッとあげるっていう 。
水本: すごくいいですね。事を成す人って、そうやって自分のスイッチを持っているっていう話、聞きますよね 。
「なんで君は袖がないんだい?」ベストが選ばれない理由
水本: ちょっと角度を変えた質問になりますが、逆に「絶対に着ない服」ってあるんでしょうか?
中島: ああ、ありますね。お店の方におすすめされて買ったけれど、一回も腕を通さなかったもの。例えば、ベストみたいなやつですね 。
水本: ベスト 。
中島: なぜか生活の中にそぐわないというか。中途半端な状態になってしまう気がして 。
水本: ちょっと漁師っぽい感じになったり、マタギ感が出ちゃいますからね(笑) 。
中島: あはは(笑)。あとは、どうしてもゴワっとしてしまって。私は「機能としての洋服」というのをすごく大事にしているところがあるのかなと 。
水本: なるほど。そのベストは自分の機能美の中では「どういう役割を果たしてますっけ?」というところが腹落ちしないんですかね 。
中島: そうなんですよ。多分「なんで君は袖がないんだい?」みたいな(笑)。しっくりきていないんだろうなと思います 。でも昔、花柄は絶対に似合わないから着なかったんですけど、今は花柄を買いますね 。
水本: わかります。絶対選ばなかったものをちょっと選び始めたりしますよね 。
中島: そう、これは驚きなんですよね。花柄だけでも結構華やかになって、機能的にもそれだけでカジュアルなんだけれど仕事でも使えるような、私の機能的要素として重要視しているところと合致するようになったんです 。
母から私、そして娘へと繋がる循環
水本: 面白いですね。それでは、ミキティの服について「忘れられないエピソード」があれば教えてください 。
中島: 母の話ですね。母は洋服を探しに行くのが好きで、一方で私があまりにも無頓着だったので、いつも私に服を買ってきてくれて、選んでくれるような人だったんです 。お願いしたわけではないのに彼女が買ってきた洋服がいっぱいあって。当時は好みじゃないと思っていたものも、時間が経つと「あ、これは今着たくなるな」というものが出てきたりして。その時に、「母はこれをどういう気持ちで買ったのかな」と思いを馳せる機会が日常的にありますね 。
水本: 今度は中島さんが母という立場になって、当時の母の気持ちとオーバーラップする部分もあるんじゃないですか?
中島: そう、そうなんですよね。逆に今度は、娘が自分で選びたい人なんですよ 。
水本: それは面白いですね 。
中島: かつ、私に提案してくるんです、4歳なのに。「次はこれを着て」って。すごいな、「次の私の服を選んでくれる人」を産んでしまったという感じです(笑) 。
水本: すごい循環型じゃないですか! 素敵ですね。
「まちづくりからうんこ」まで。”ちいき資本主義”への想い
水本: さて、ここからは少しミキティご自身のことについて伺えればと思います。「面白法人カヤック」とは一体どんな会社なんでしょうか?
中島: 創業26、7年くらいの会社で、広告制作やゲーム開発、地域事業など様々展開しています。Eスポーツ、ウェディング、葬儀、不動産、保育園の運営も。プロジェクトでは「うんこミュージアム」も運営しているので、「まちづくりからうんこまで」なんてフレーズをよく使っていますね 。
水本: すごいですね。でもかといってゲーム会社みたいな文脈では決して語られないですよね 。その中でミキティは「ちいき資本主義」を担当されていますが、これはどういった考え方なんでしょうか?
中島: 2017年に弊社の代表の柳澤が『鎌倉資本主義』という本を出しました 。地域経済を活性化させる際に、お金でお金を増やすやり方では継続が難しい。地域こそ、人と人のつながり(社会資本)や文化、歴史、環境といった、地域ならではの大事にしてきているものを人と一緒に高めていくことで、最終的に経済にプラスの影響が働いてくるだろうという仮説です。それを全国のいろんな地域で実現していくことを今やっています 。
水本: なるほど。紳士服の業界でも、愛知の「尾州(びしゅう)」という世界三大毛織物産地がありますが、地理的な希少性を活かしきれなくなっている地域はたくさんあるなと感じています 。
中島: そうですね。もともと技術や特有の手法がありつつも、OEM(受託製造)ばかりで自社で製品化できていなかった地域も多いですが、最近は自社商品をどんどん展開しようとされる地域も増えています 。そこに外からデザイナーが入って一緒に作っていくような事例もよく見かけるようになりました。都市部の人たちが関わるきっかけが生まれているのは、いい取り組みだなと思います 。
明日、どんな気分で服を選びますか?
水本: ありがとうございます。ミキティには、これからも地域を盛り上げる接着剤になっていただければと思います 。最後に、ぜひ伺いたいことがあります。明日、ミキティはどんな気分で服を選ぼうと思っていますか?
中島: 明日はちょっと来客があるのと、盛り上げたいなという気持ちもあるので、元気なビタミンカラーの「黄色のセーター」を着るのではないかなと思っています 。
水本: 素晴らしい選択ですね。黄色のミキティを楽しみにしています。本日のゲストは、おもしろ法人カヤックの中島みきさんでした。ありがとうございました 。
中島: ありがとうございました 。
繊研新聞ピックアップ
皆さん、こんにちは。本日も繊研新聞から気になった記事をピックアップしてお届けします。
今回注目するのは、いよいよ2月11日に開幕する「26-27年秋冬ニューヨーク・ファッションウイーク」です。今回のNYは、水曜日に始まり月曜日に終わるという異例のタイトなスケジュールですが、その分、各ブランドが凝縮されたエネルギーをぶつけてきそうです。
中でも注目は、昨年CFDA新人賞とヴォーグ・ファッション・ファンドをダブル受賞するという快挙を成し遂げた、アシュリン・パーク率いる「アシュリン(ASHLYN)」です。ヨウジヤマモトなどで研鑽を積んだ彼女の武器は、息を呑むようなパターンメイキング。受賞後初となる今回のショーで、さらに進化した立体美が見られるのか、世界中が固唾を呑んで見守っています。
また、今回は「服」だけでなく、その周辺の「場」にも注目が集まっています。最終日の2日後には、アレキサンダー・ワンが、アジア系アメリカ人のクリエイティビティを発信する新施設「ワン・コンテンポラリー」をオープン。ファッションがコミュニティやアイデンティティとどう結びついていくのか。今のNYを象徴するような、非常に文化的な動きからも目が離せません。
Lv.99 インフォメーション
さて、最新のコレクションの話題を聞くと、自分のワードローブもアップデートしたくなりますよね。ここからはLv.99からのお知らせです。
カレンダーは2月に入りました。ショップには早くも「2026年春夏」の新作生地が届き始めています!まだ空気は冷たいですが、この時期にさらっとしたリネンや、春らしい明るい色のウールを眺めるのは、服好きにとって至福のひとときですよね。「次はどんな一着を仕立てようか」という妄想を、ぜひ一緒に形にしていきましょう。
一方で、大切なリマインドです。「2025年秋冬」の生地については、いよいよ最終在庫となっております。特に、今シーズン迷っていたコートや、重厚なフランネルのスーツなどを検討されている方、これが本当にラストチャンスです。今の気分にぴったりの厚手の生地は、今を逃すと来年までお預けになってしまいます。
春への期待と、冬の締めくくり。今だけの特別なラインナップを揃えてお待ちしています。サイズ感の相談や、生地の見学予約は、公式LINE、またはInstagramのDMからお気軽にご連絡ください!
エンディング
今日の収録は、機材を忘れて直前に焦るというハプニングもありましたが、なんとか工夫で乗り切ることができました 。中島みきさん、ミキティの話は、鎌倉のパタゴニアの話や20年前の服のログの話など、実に興味深い洞察ばかりでした。改めてありがとうございました。
それでは皆様、お気に入りの服を着て良き週末をお過ごしください。ナビゲーターの水本慎太郎でした 。